カタン
毎日の習慣でボーっとしててもポストを開けるつかさ
いつもここで溜息をつきながらポスト閉じて自分の部屋に入る
だけどこの日は違った
「・・・エアメール」
一度ポストを閉じてしまった後にその残像にハっとする
(今・・・見間違いじゃなければ・・・)
もう一度勢い良くポストを開く
「あった・・・」
「・・・ってなんだぁトモコかっ なーんてそんなこと言ったらトモコに失礼だよねっ」
一瞬ガッカリしつつもやはり大切な親友からの手紙は嬉しい
にこにこしながら手紙を眺める
手探りでポストを閉めようとしたら指先がもう1通の手紙にあたった
「・・・あれ・・・」
恐る恐る差出人の名前を確認する
そこには何度も何度も心の中で呼んだ愛しい人の名前
「・・・淳平くん・・・」
社交辞令のような当たり障りのないやりとりは何通かしていた
写真を送ったこともあった けれどここのところ新しい環境にもなじんでしまい、
”恋人でない”2人は特別な出来事がない限り手紙を出したくても そこに綴れる言葉などなかった。
そのためペースは落ち、 はじめの半年こそは何度かやり取りがあったものの
切りのいいつかさの手紙を最後に長い間淳平からの音沙汰はなかった。
それでも万が一、とつかさは毎日毎日ポストを覗いては思い馳せていた。


久しぶりの手紙に嬉しさを隠せずに頬を赤くする。
抑えようと思っても口角があがってしまう (淳平くん淳平くん)
何かのおまじないのように何度も何度も懐かしく愛しく 
そして優しいその名前を 繰り返しなぞった



お茶をいれよう 今日は評判のケーキ屋さんで買ってきたショートケーキもある
大好きな音楽をかけて 午後のお日様の光を浴びながら
ゆっくりと読むんだ だってすぐに読みきってしまったらもったいないから
鼻歌で小さなメロディを奏でながらつかさは部屋に入りドアを閉めた
ドアが閉まる音さえも幸せの歌を歌っているようだった